溶連菌感染症とはこんな病気
「溶連菌感染症」の病名を、初めて聞くと言われる方も多いでしょう。溶連菌感染症は、A群溶血性連鎖球菌(溶連菌)が、のどに感染して起こる病気です。
5歳から15歳までの子どもに多くみられますが、ときには大人も感染してしまう場合もあります。風邪として見逃されていることも多く、注意が必要です。
症状の多くは咽喉炎や扁桃炎で、のどが赤く腫れて痛みを伴い、高熱が出ます。舌もイチゴのような、ブツブツとした舌になることが多いのです。
また全身にかゆみを伴う赤い発疹が多く出ます。そして発疹が消えた後は、手足の指先から皮がむける場合もあります。
溶連菌の主な治療法は抗生剤の服用
先ほどお話したように、溶連菌感染症は菌が原因の病気です。これには抗生剤の効果が極めて高く、この病気の治療も抗生剤の服用が中心となります。
抗生剤とは、病気の原因となっている菌を直接殺したり増殖を抑制して、感染症を治療する薬です。
溶連菌感染症の治療に有効とされる抗生剤にはいくつかの種類があり、一般的に以下の薬が使用されています。
ペニシリン系抗生剤
溶連菌感染症の治療でまず選択される、最も基本的な治療法です。
主に次の抗生剤が用いられます。
アモキシシリン
これは連鎖球菌・大腸菌・腸球菌・肺炎球菌・変形菌などを死滅させる、ペニシリン系の代表的な抗生物質です。
細菌が原因のいろいろな病気に用います。
カプセルや錠剤、細粒など、色々な種類が揃っており、からだの状態に合わせて選べます。
また、子供向けにはドライシロップも用意されています。
以下は、アモキシシリンの主な製品名の例です。
・アモキシシリン(東和薬品・辰巳化学)
・サワシリン(アステラス)
・パセトシン(協和発酵)
・ワイドシリン(明治製菓)
平均的な用法・用量は次の通りです。
・成人…通常1日250㎎を、3~4回に分けて服用します。
・小児…通常1日20~40㎎/㎏を3~4回に分けて服用します。
(なお、小児用ドライシロップは48.2mg/kgを12時間ごとで、食事直前の2回服用です)
服用期間は10日間です。
ところで人によって、ペニシリンが重篤なアレルギー症状を引き起こす場合があります。
ペニシリン・ショックといわれる症状には、次のような例があります。
・蕁麻疹
・低血圧
・目のかゆみ
・気管支喘息
・アナフィラキシー・ショック(急激な血圧降下・呼吸困難・意識不明)
ペニシリンでアレルギー症状を起こしたことのある方は、必ず医師に告げて下さい。
セフェム系抗生剤
ペニシリン系抗生剤に、アレルギーがある方の場合に使用されます。
主に、次の抗生剤が用いられます。
メイアクト、フロモックス
これらは、抗生剤の服用によってアレルギー症状を起こす可能性が、ペニシリン系に比べて低く、副作用も少ない抗生剤です。
大人用の錠剤と、小児用には顆粒があります。
平均的な用法・用量は次の通りです。
・成人…通常1回1錠(100㎎)を、1日3回食後に服用します。
・小児用顆粒…小児は1回に体重1kgあたり0.03gを1日3回食後に服用します。
(嚥下困難などで錠剤が服用できない成人は、1回1gを1日3回食後に服用します)
服用期間はメイアクトで10日間、フロモックスで5~10日間です。
マクロライド系抗生剤
ペニシリン系にもセフェム系にもアレルギーがある方の場合に使用されます。
主に次の抗生剤が用いられます。
ジスロマック、クラリス
副作用が少なく使いやすい反面、耐性のある菌も多いのが問題です。
平均的な用法・用量は次の通りです。
・ジスロマック…通常、成人には1日500㎎を1回服用します。
・クラリス…通常、成人には1日400㎎を2回に分けて服用します。
(小児の場合は、医師の指示に従って服用)
服用期間はジスロマックで3日間、クラリスで10日間です。
抗生剤を使用する際の注意点
抗生剤を服用すると、服用後2~3日で症状がかなり緩和されるため、体が楽になりそこで服用をやめる人も多いです。
しかし抗生剤は、一日当たりの決められた回数を、決められた期間きちんと飲み切ることが大切です。
理由は次の通りです。
・途中で薬を飲み止めると、症状が再発することがある
・きちんと飲まないと、抗生剤本来の効果が期待できなくなる
・急性腎炎やリウマチ熱などの合併症を防ぐためには、体内を除菌するための期間を含めて薬を飲む
まとめ
抗生剤は、溶連菌感染症の治療に有効な手段です。薬本来の効果をきちんと発揮させるためにも、医師の指示を確実に守った服用を心がけましょう。
飲むのは簡単ですが、飲み方がとても大事なのです。