溶連菌の種類
冬場に多く流行する病気の一つに、溶連菌感染症があります。溶連菌と呼ばれる細菌によって引き起こされる、感染症状です。
その溶血性や型によって、いくつかの種類に分類できます。
溶血部の周辺が緑色になる場合、α溶血(不完全溶血)が疑われます。溶血部の周辺が透明な場合、β溶血(完全溶血)が考えられるでしょう。
溶血が全く見られない、γ溶血という種類も存在します。γ溶血は、臨床的な問題のある症状にはなりません。
同じβ溶血であっても、細胞壁の抗原性などで分類されています。何と、AからVまでものグループに分けられるほどです。
特に、多く見られるのがA群とB群です。まずは、A群β溶連菌について紹介しましょう。
A群溶連菌
急性感染症と続発症があることが、確認されています。急性感染症とは、気道感染症として起きる咽頭炎や扁桃炎などです。
さらに、皮膚への感染症として、丹毒や蜂巣炎などを引き起こすともされています。
場合によっては、壊死性筋膜炎や劇症型A群レンサ球菌感染症に至ることもあるでしょう。一般的には、人喰いバクテリアと恐れられているものです。
A群β溶連菌によって咽頭炎や扁桃炎、全身への発疹が伴う場合、猩紅熱と診断されます。イチゴ舌のような、特徴的な症状が現れれば、ほぼ確定できるでしょう。
続発症は溶連菌に対して免疫的な反応が起こることによる症状です。感染から約2週間後に急性糸球体腎炎、一般的には溶連菌感染後糸球体腎炎に至ることとなります。
また、リウマチ性疾患により僧帽弁閉鎖不全症や僧帽弁狭窄症を招くでしょう。※僧帽弁とは心臓内の血液が逆流しないように働いている弁です。
急性糸球体腎炎は、溶連菌と対抗する抗体が複合体を成し、免疫複合体として糸球体に沈着します。そのことによって、腎臓に障害を与えるものです。
リウマチ熱の場合、溶連菌が持っているMタンパクなどの成分と心筋の抗原性が酷似していることが知られています。
その結果、溶連菌に対応する抗体が、心筋と結合して障害をもたらすのです。
B群溶連菌
一方、B群溶連菌は咽頭や腸、膣などにいる常在菌になります。
臨床面で問題とされるのは、妊婦が出産の時に新生児に感染させてしまうことです。感染症の発生確率は、およそ1%と低い割合とされています。
感染すると、出生後、数時間程度で発症します。敗血症や肺炎、髄膜炎などを招くでしょう。
膣内にB群溶連菌を保菌している妊婦の場合には、感染予防のためにペニシリンを投与します。
B群溶連菌は常在菌であるため、感染の原因や経路を調べることは困難です。
保菌者であっても、症状が出ていなければ、特別な治療は必要ありません。そして、多くの方が体内にB群溶連菌を持っているとされています。
溶連菌の感染がわかって、治療を施したとしても、全ての合併症を防ぐことができるのかは、わかっていません。
しかし、多くの場合、十分な休養を取ることで、状態も安定するとされています。原因不明の病気だと、溶連菌の症状に焦っても仕方のないことです。
A群溶連菌と比較すれば、B群溶連菌は、それほど、恐ろしい症状ではありません。もちろん、出産を予定されている妊婦さんの場合、それなりの対処が必要となります。
新生児への感染を予防することが、大きなポイントとなるでしょう。
残念ながら、体内のB群溶連菌だけを取り除くということは、現実的には困難です。常在している菌ですから、除菌することで、他の有用な菌をも失ってしまいかねません。
何とかして、B群溶連菌を駆除するのかでは、意味が無いのです。どうやって、共生するかを考えるほうが良いと言えるでしょう。
まとめ
B群溶連菌は、意外に身近にある未知の存在です。感染が心配な方は、病院で溶連菌の検査をしてもらうのも悪くありません。
もちろん、症状が出ていなければ、問題なく普段の日常生活を送れるでしょう。